心房細動が慢性化すると動悸や息切れなどの自覚症状は軽減しますが、心房細動の最も恐ろしい症状あるいは合併症は心原性塞栓症です。
心原性脳塞栓症は脳梗塞の一つで、心房細動では心房の律動的収縮が失われ、心臓内(特に左心耳内)の血流がうっ滞して生成された血栓(凝固した血液)が血流に乗って脳にまで運ばれて血管の目詰まりを起こし、脳への血流が途絶され脳の壊死を起こすものです。
この心原性脳塞栓症は、動脈硬化などを原因とする他の脳梗塞と比べて、突然発症し、半身麻痺や意識障害、構音障害(しゃべれない)などより重篤な症状を生じ、生命にかかわることも稀ではありません。
仮に一命を取り留めたとしても、直ちに適切な治療を受けないと重篤な後遺症のために寝たきりの状態になることも多く、患者さん本人だけでなく家族や周囲の人々にも重大な社会的あるいは経済的影響を及ぼします。心房細動が加齢とともに増加することから、長寿高齢化を迎えている国に共通の課題とも言えます。
心原性脳塞栓症の頭部CT画像、右側頭葉の広範囲におよぶ脳梗塞